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小動物臨床血液研究会

小動物臨床血液研究会とは

小動物臨床血液研究会は、1993年に小動物臨床研究会(現動物臨床医学会)の分科会として発足しました。本研究会の目的は日本の小動物血液学分野の発展・普及に貢献し、その結果としてペットオーナーの幸せ、満足につながることです。より多くの獣医師に血液学に対する興味と知識を持っていただき、症例を集積する場としてこの研究会を発足させました。会を重ねるごとに内容は充実し、症例報告のレベルも高度になってきています。現在年2回の研究会を、大阪の動物臨床医学会年次大会と東京の獣医内科学アカデミー総会の中で開催しており、さらに10月には毎年岡山で臨時セミナーを開催しております。

講座1 LDHとアイソザイム

乳酸脱水素酵素(LDH)は体内の多くの臓器・組織に存在し、多くの疾患においてその活性値は上昇しますが、臓器特異性に乏しく他の臨床検査や酵素活性から障害臓器を特定する必要があります。LDHは5種類のオアイソザイムに分けられ、それらのアイソザイムの分布パターンは臓器により異なり、したがって障害された臓器によってLDHアイソザイムパターンに違いが認められます。

例えば、心筋障害や溶血性疾患では分画1,2(1>2)が、肝臓障害では分画4,5(4<5)が、リンパ腫や白血病では2,3が優位なパターンを示すことが人では明らかとなっています。犬や猫でも溶血性疾患では分画1,2が優位なアイソザイムパターンを示し、血小板の破壊による血小板減少(ITPやDIC)では分画2,3,4(2<3>4)が優位な異常なパターンをとり、他の病気では正常パターンをとります。したがって、LDHアイソザイムは、原因が特定できない貧血の鑑別診断や血小板減少の原因の内破壊によるものと産性の低下によるものの区別、さらにリンパ腫の病期分類に有用です。

<参考文献>動物臨床医学7(2) 67-74 (1998)

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講座2 血清鉄、TIBC、UIBC、トランスフェリン飽和度

血清中の鉄はトランスフェリンと結合して存在しており、正常では血清中のトランスフェリンは約30%だけが鉄と結合しています。 これが血清鉄であり、残りの鉄と結合できる予備力を不飽和鉄結合能(UIBC)と言います。 この血清鉄とUIBCを合せた鉄と結合できる能力を総鉄結合能(TIBC)と言います。 また、血清鉄とTIBCの比率をトランスフェリン飽和度(正常では約30%)と呼びます。 これら血清鉄、TIBC、UIBC、トランスフェリン飽和度は非再生性貧血の鑑別に非常に有用でありますが獣医臨床ではあまり一般的に用いられていません。 非再生性貧血を示す病態の内、血清鉄が低下するのは鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血 (anemia of chronic disease;ACD) だけです。

ACDは悪性腫瘍や慢性感染症、慢性炎症に伴った貧血ともいわれます。 その他の非再生性貧血を示す病態ではすべて血清鉄は増加します。 鉄欠乏性貧血ではTIBCの上昇が人ではみられます。 しかし犬では上昇しないことが知られており、猫では少ないデータですが人と同様に上昇すると言われています。 ACDのカテゴリーに含まれる貧血ではTIBCは低下します。 したがって鉄欠乏性貧血とACDはTIBCによって鑑別が可能になります。 非再生性貧血の血清鉄、TIBC、UIBC、トランスフェリン飽和度(Tf-sat)、貯蔵鉄を表に示しました。 非再生性貧血が認められた場合、まず血清鉄とTIBCそしてトランスフェリン飽和度を調べて鉄欠乏性貧血とACDを除外してから、次のステップに進むのが正しい検査手順です。

血清鉄 TIBC UIBC Tf-sat 貯蔵鉄
鉄欠乏性貧血 ↑(→)
慢性疾患(ACD) ↓→
その他の貧血
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講座3 貧血の分類と診断 その1

貧血は大きく分けて再生性貧血と非再生性貧血に分類されます。前者の原因には溶血性貧血と急性出血、分布異常があり、後者の原因は骨髄の赤芽球の減少によるものと赤芽球の成熟障害により成熟過程で壊れてしまう、いわゆる無効造血によるものがあります。無効造血によるものはさらに細胞質の成熟障害によるもの、すなわちヘモグロビン合成障害によるものと核の成熟障害によるものに別けられます。貧血の診断手順としてはまず網赤血球数により再生性か非再生性かに分類します。

網赤血球は多染性赤血球と同じなのでこれにより評価してもさしつかえありません。犬の網赤血球は1種類ですが、猫の網赤血球は2種類(点状型、凝集型)あるいは3種類(点状型、斑状型、凝集型)に分類されます。点状型や斑状型は急性失血後10-20日目にピークとなり、その後4週間循環血液中に存在するため赤血球のその時点での再生の指標としての価値は低く、一方凝集型は急性失血後4-7日でピークとなるため、再生の指標として有効で猫の多染性赤血球はこれに相当します。網赤血球の評価は相対的評価(修正網赤血球%)、絶対的評価(実数)、網赤血球指数(RPI)のいずれかにより行います。再生性貧血は修正網赤血球が1%以上、網赤血球が60,000/μl以上、RPIが2以上のいずれかの所見により診断されます。修正網赤血球(%)=網赤血球(%)×PCV(%)/45%(猫35%)

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講座4 貧血の分類と診断 その2

再生性貧血と診断された場合は溶血、 急性出血、 脾機能亢進が疑われます。 溶血性貧血のうち,免疫介在性, ハインツ小体性, ヘモバルトネラ症, バベシア症などが比較的よく遭遇する疾患です。

溶血性貧血の特徴的な臨床検査所見としては

  1. 間接ビリルビンの上昇(1mg/d 以上、 総ビリルビンの50%以上)
  2. ハプトグロビンの減少(血管内溶血)
  3. LDHの上昇, アイソザイムは1,2の上昇
  4. 骨髄の赤芽球系細胞の過形成

などが共通の所見として見られます。その他、発熱、黄疸、血色素血(尿)症などもよく認められる所見です。

各種溶血性貧血の鑑別診断は、赤血球の形態学的観察により行います。球状赤血球は免疫介在性溶血性貧血,破砕赤血球は細血管障害性溶血性貧血,有棘赤血球は肝障害時のspur cell anemiaの特徴です。赤血球の内部構造によりバベシアやヘモバルトネラ, ハインツ小体を鑑別します。 直接クームス試験はヘモバルトネラ症やハインツ小体性貧血, バベシア症でも陽性になることがあるので免疫介在性溶血性貧血の特異的検査とはなりません。

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講座5 貧血の分類と診断 その3

再生不良性貧血は多能性造血幹細胞の量的ないし質的欠陥によって骨髄ならびに末梢血中の赤血球系、 顆粒球・単球系、 血小板系の造血3系統の未成熟細胞ならびに成熟細胞が減少した状態をいい、末梢血の汎血球減少症と骨髄の低形成を特徴とする疾患です。続発性のものには薬剤、 放射線、感染、ホルモンによるものなどがあります。特発性再生不良性貧血の発生機序には免疫学的機構が関与していると考えられています。

臨床所見は貧血による運動不耐性、 沈鬱。血小板減少による出血傾向(出血斑)。白血球減少による発熱などが認められます。 末梢血は正球性正色素性非再生性貧血、 好中球減少症、 血小板減少症すなわち汎血球減少症を認める、通常骨髄は著しい低形成を示し、脂肪組織が大部分を占め、3系統の細胞ともに減少しますが特に巨核球はほとんど消失しているのが特徴です。 芽球の増加や異型細胞の浸潤、 形態学的異常は見られません。また、相対的なリンパ球、 プラズマ細胞の増加が認められます。 特発性の治療は免疫抑制療法とサイトカイン療法が中心に行われます。

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